2019年度修士制作|板部玲子

塔と穴の庭

 

塔の上昇エネルギーを象徴する姿に惹かれる。と同時に、上へ上へと成長し続けなければならないという強迫観念も感じる。

そしてエネルギーを貯める”穴”とセットで存在することで、塔は力を存分に発揮できるということを発見した。

 

リニア中央新幹線の非常口兼通気口として、直径約40m、深さ約90mほどの穴が、品川ー橋本間で9ヶ所あく。

地上の事情とは関係なく現れる巨大な穴に対峙するとき、9つの穴に対して塔を立てることによって穴の存在を許し恐怖を克服できると考えた。

 

成長を求めすぎるあまり置き去りにされようとしていた土地柄が塔として表出した「塔と穴の庭」は、我々が求めて止まない自らの根源を想起させる風景となる。